ラインの上を歩く。


朝 会社へ 向かっていると
トラックが おなかを こちらに向けて
道路に 横たわっていた。


ああ、日常から はみだしている、と 思う。


例えば 時速100Kmで走る車を 運転しているとき。
例えば 高い場所から 地表を 見下ろしているとき。
例えば カッターナイフを 紙の 表面に 滑らせているとき。
このハンドルを 少し どちらかに 切れば、
この足を 1歩 踏み出せば、
この手を ふっと 離せば、
私も 日常から はみだして
昨日とは まったく 違う 景色を 見るんだろう。
普段 気にも 留めていないところに
非日常は 口を 開けていて
いつでも 私を、私の大切な人たちを 飲み込めるんだと
思って 首の裏あたりが ざわりとする。