冤罪。


実家には 無邪気な バカ猫が居る。
一番 新入りの。


袋が 好きで
スーパーの袋の口を 開いて
置いておくと 物凄い勢いで 飛び込んでくる。
そんな風にして 実家に帰るたびに 私は
飽きもせずに 長い時間
袋が ぼろぼろに なるまで 遊んでいた。


この間 実家に 帰った時
母が 畑で たまねぎの苗を 植えていた。
その苗が 入っていた 袋で 猫が 遊んでいて
何かの拍子に 取っ手の 部分に
頭が 入って 抜けなくなったらしく
パニックを起こした彼女は
猛スピードで 駆け出した。


逃げても 逃げても
取っ手が 首に ひっかかっているものだから
(スーパーマンのマントみたいな感じで)
背中の方で ざばざばと 袋の 音がする。
さらに遠くへ もっと速くと 駆ける 猫。


少し 離れたところにいた私は その猛スピードで
目の前を 通り過ぎた ざばざばいう物体を
呆然と 見送った。


そのままの 勢いで 車道なんかに 出ちゃあぶない、と
母と 二人で しばらく 近所を 探したのだけれど
苗物屋さんの ビニール袋も 猫の姿も
見つけることが できなかった。


夕方頃になって
どこかで ざばざばオバケを 落としてきたらしい
疲れきった様子の 猫が 帰ってきたのを確認して
私は 実家を 後にした。


そうしたら。
次に 実家に 帰ると
どうも その猫の様子がおかしい。
雨の中 外から 家に 帰ってきたのに
すぐにまた 外に 出してと 懇願する。
近寄ると テーブルの下なんかに 潜り込む。


これは もしや、と 思い
試しに ビニール袋を 手に持ってみると
彼女は 怯えの色を 濃くし
人の手の 届かない 家具の 奥の奥へと
お隠れあそばされた。


どうやら
私=ビニール袋=とてもコワイ。という
図式が 彼女の中に 埋め込まれたらしい。


どうしたら この誤解は 解けるのか。
ひとつ 毛糸で 猫のおもちゃを 作ってみる。
首に ひっかからないやつ。



※うちの猫ではありません。